米津玄師『M八七』計算し尽くされたコード進行徹底分析

楽曲レビュー

 どうもbunkimanです。
 今回は映画「シン・ウルトラマン」主題歌「M八七」のコード進行について徹底的に分析していきたいと思います。今更なぜか。全体的に難解な上にCメロのコード進行がよく分からなすぎたので知的好奇心というやつです。そんな気持ちで調べ始めた私は、この曲の偉大さを後で知ることになるのでした…。

 ちなみに今度米津玄師さんの新しいアルバム「LOST CORNER」が2024年8月21日に発売されます。そちらの楽曲についてレビューも行なっているのでもしよろしければ合わせて読んでいただければ幸いです。

 それでは早速、コード進行を見ていきましょう!

Aメロ

コードネーム
  1. G♭M7 → A♭ → B♭m7 → Fm7
  2. G♭M7 → A♭ → B♭m7 → Fm7
  3. G♭M7 → A♭ → B♭m7 → Fm7
  4. E♭m7 → Fm7 → B♭m
ローマ数字表記法
  1. Ⅳ → Ⅴ → Ⅵm → Ⅲm
  2. Ⅳ → Ⅴ → Ⅵm → Ⅲm
  3. Ⅳ → Ⅴ → Ⅵm → Ⅲm
  4. Ⅱm → Ⅲm → Ⅵm

 スタートのキーはD♭になります。Aメロのコード進行についてはこの曲の特徴である「Ⅳ→Ⅴ→Ⅵm」進行を中心としてシンプルに組み立てられています。「Ⅳ→Ⅴ→Ⅵm」の上昇系のコード進行であること、ⅠではなくⅥmに着地していること、またⅥmが長めに鳴っていることで浮遊感が演出されているように感じます。1、2の最後についているⅢmについてはどちらかと言えばⅣの助走のような役割を担っているので、より上昇感を感じますね。

Bメロ

コードネーム
  1. Fm7
  2. E♭M7 → F → Gm7
  3. G♭M7 → A♭ → B♭m7
  4. AM7 → B → C#m7 → G#m
  5. F#m → G#m → G♭/B♭ → A♭7/C
ローマ数字表記法
  1. Ⅲm
  2. (短3度下転調・B♭)Ⅳ → Ⅴ → Ⅵm
  3. (短3度上転調・D♭)Ⅳ → Ⅴ → Ⅵm
  4. (短3度上転調・E)Ⅳ → Ⅴ → Ⅵm → Ⅲm
  5. Ⅱm → Ⅲm → (短3度下転調・D♭)Ⅳ/Ⅵ → Ⅴ/Ⅶ

 Bメロは転調を繰り返しながら「Ⅳ→Ⅴ→Ⅵm」の進行をしてゆきます。短3度転調は頻繁に見かけると思うので説明は割愛とさせていただきます。2で一度さがり4へ向けて2度の短3度転調で上昇していきます。もともと「Ⅳ→Ⅴ→Ⅵm」で上昇する進行だったのにより上昇感が出ています。ウルトラマンが飛んでゆくイメージとでも言うのでしょうか。
 問題はサビに向けて進行していく5。3番目G♭/B♭でD♭に転調していると考えるとまたメインのコードは「Ⅳ→Ⅴ」の進行になっています。この曲の核心である進行ですね。そして何故かオンコードになっています。ルートオンだけに注目するとF#、G#、A#、Cなので全音での上昇になっているんですね。どういうこと…。なのでこの曲の核心のコードに乗せつつ上昇を意識した進行になっていて、サビに飛び立っていくよ、と言うのが私の結論です。ちなみにサビはここから3度上に転調していてよりサビ感が出ています。いやちょっと真似できない。

サビ

コードネーム
  1. G#m7
  2. AM7 → B → C#m7 → D#m7-5 → G#7 → C#m7
  3. AM7 → B → Cdim7 → C#m7
  4. F#m7 →G#m7 →AM7 → B
ローマ数字表記法
  1. Ⅲm
  2. Ⅳ → Ⅴ → Ⅵm → Ⅶm7-5 → Ⅲ → Ⅵm
  3. Ⅳ → Ⅴ → Ⅴ#dim → Ⅵm
  4. Ⅱ → Ⅲ → Ⅳ → Ⅴ

 ついにサビまで来ました、キーはEです。サビはAメロからみて短3度上のキーになってますね。進行はこの曲の肝である「Ⅳ→Ⅴ→Ⅵm」の進行が中心になっています。ほぼほぼAメロと同じですね。
 2の「Ⅶm7-5→Ⅲ」の進行は感電のAメロとかでも使用されています。個人的に響きが結構好きな進行です。
 3の「Ⅴ→Ⅴ#dim→Ⅵm」という進行は米津さんも良く使用されているような気がしますがV#dimはパッシングディミニッシュと呼ばれています。良い雰囲気を演出しながらも流れるようにコードが進行していくので使えると便利です。私がよく使うのはⅡmに繋げたい時の「Ⅰ→Ⅰ#dim→Ⅱm」か上記の進行です。

Cメロ

コードネーム
  1. G♭maj7 → A♭ → Cm7 → Gm7 → Dm7 → Am7 → Cm7 → F
  2. G♭maj7 → A♭ → Cm7 → Gm7 → Dm7 → Am7 → Cm7 → F
  3. G♭maj7 → A♭ → Cm7 → Gm7 → Dm7 → Am7 → Cm7 → F
  4. E♭M7 → F → Gm7 → Dm
  5. Gmaj7 → A♭ → Amaj7 → B → C#
  6. G#m7
ローマ数字表記法
  1. (短3度下・D♭)Ⅳ → Ⅴ→(短3度下・B♭)Ⅱm→Ⅵm→Ⅲm→Ⅶm→Ⅱm→Ⅴ(Ⅲ)
  2. (短3度上・D♭)1と同じ
  3. (短3度上・D♭)1と同じ
  4. (短3度下・B♭)Ⅳ → Ⅴ → Ⅵm → Ⅲm
  5. (短3度上・D♭)Ⅳ → Ⅴ →(短3度上・E)Ⅳ → Ⅴ → Ⅵ
  6. Ⅲm

 遂に本記事を書く動機となったCメロです。最初は全然わかりませんでしたが1時間ほど睨めっこして見えてくるものがありました。
 まずは1から3について。楽曲の中でも浮遊感もありつつどこか不安げな雰囲気を漂わせている部分でもあります。3つ目のCm7から短3度下に転調していると考えると最後以外は全てマイナーコードでガッチリとハマります。なかなかこんな進行はすることないと思いますがその聴いたことない感じが浮遊感や不安感を演出しているように感じます。最後がⅤなのも良いなと思っていて、これは元のキーのⅢとも捉えることができ、ⅢはⅣに繋がるのを連想できる導音的な役割も果たしていると思われます。それらも含め前半・後半でメジャー・マイナーが分かれており、マイナーの最後でメジャー(Ⅴのこと)にすることによって明るい部分・暗い部分において逡巡している様も感じ取れます。
 4から5については実はBメロの展開とさほど変わらないのですが大きく雰囲気が異なります。Bメロの転調しながら「Ⅳ→Ⅴ→Ⅵm」と進行してゆく流れと比較すると
・B♭:最後にⅢmがくっ付いた。
・D♭:Ⅵmを省略。
・E♭:ⅥmがⅥとなって着地。
B♭の流れにⅢmがくっ付いて助走をして、D♭のⅥmを省略することによって勢いを増して、E♭の流れで最後にⅥを持ってくることによって開放感が一気に増します。「Ⅳ→Ⅴ→Ⅵ」という流れは開放感を出したい時に使われることが多いです。歌詞の流れ的にも少し前の部分で不安感を仰ぎながらここで決意をするような流れでもあるのでこの開放感がとても際立ちますね。今まで曲中で多くの「Ⅳ→Ⅴ→Ⅵm」を使っていて、ここぞのポイントで「Ⅳ→Ⅴ→Ⅵ」となっているのもなんと計算尽くされた楽曲なんだ…と少し愕然としてしまいます。

まとめ

 興味本位で調べ始めたコード進行ですが、想像をはるかに超えるレベルの計算し尽くされた進行でした。「Ⅳ→Ⅴ→Ⅵm」の進行をこれだけ使って、転調の上下を繰り返しながら全てはCメロの最後のために作ったような曲だと感じました。
 コード進行だけでもすごいのに、歌詞もよく練られており、サウンドメイクも浮遊感がすごく…改めて本楽曲の良さに気付かされました。調べてよかった…。

 本記事は以上になります。楽曲分析や作曲に役立つような情報を記事としてまとめておりますのでもしよろしければ他のページも見ていってくれると嬉しいです。

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