米津玄師『LOST CORNER』全曲レビュー

楽曲レビュー

 今回は2024年8月21日発売の新アルバム『LOST CORNER』の全曲レビューをします。※現時点(2024年7月6日)は発売前のため、現在発表されている曲をレビューします。またアルバムが発売されましたら再度記事を更新させていただきます。

 新しいアルバム久しぶりですね。前回の『STRAY SHEEP』は2020年8月5日なのでおおよそ4年ぶりのアルバムになります。今回Amazonで『がらくた盤』を予約しています。「米津玄師 2023 TOUR / 空想」を収録した盤も欲しかったのですがいかんせん再生できるモノがなく・・・空想は米津さんのライブで初めて行ったライブだったので思い入れがあったのですが思い出に留めておくこととします。それに「米津玄師 2025 TOUR / JUNK」の告知もありましたね。チケット先行予約のシリアルもアルバムに同封されているらしいのでこれは要チェックですね。

それでは早速曲のレビューに移って参りましょう!全20曲!多い!嬉しい!!!

01. RED OUT

※未発表曲のため割愛。

02. KICK BACK – TVアニメ「チェンソーマン」オープニング・テーマ

・チェンソーマンの主題歌
・モーニング娘。の「そうだ!We’re ALIVE」の歌詞を引用
・ギター、ベースにKing gnu / millenniunm paradeの常田大希
・曲はかっこいいのにMVがコミカル
・etc…

 上記だけでもお腹いっぱいなのに他にも豪華な共演者、功績多数で語るべきことが多すぎて困ってしまいましたね。全てを網羅しようと思ったらただの羅列になってしまうので私が感じたことを書いていこうと思います。

 初めてイントロを聴いた時「お、今回は攻めてくるなぁ」と感じたのを覚えています。これも常田さんと共同プロデュースしている結果なのか良いシナジーを産んでますね。上記で書いたようにギター、ベースは常田さんですがギターはカッティングを主軸として勢いがあるし、ベースについてはKing gnuではあまり聴かない系統の音ですよね。King gnuの新井さんも「へぇそんな良いベースライン弾くのね、良い音作りするのね。これ弾かれると俺困っちゃうな」的な発言を2022年11月1日のSPARK(新井さんがMCの担当をしているラジオ)にてしています(かなり省略しています)。今まで米津さんの曲では聴いたことがなかったような類の勢いを感じましたね。

 これでも抑えているのですがこのペースで書いていると終わらないので個人的に一番良かった点を書きます。それは2番のBメロですね。

幸せになりたい 楽して生きていたい
全部滅茶苦茶にしたい 何もかも消し去りたい
あなたのその胸の中

 急に壮大になったな、と思って歌詞を良く聴いてみると「まんまデンジじゃん・・・」となったこの瞬間が最高で、同時に原作に対する解像度の高さも感じられて、この曲を聴けて良かったという気持ちが一番に湧いてきました。
 ただ色々なものを背負いすぎたのかライブで聴いた時は他の曲に比べて少し異質な感じに思えました。でも好きですよ、この曲。

03. マルゲリータ + アイナ・ジ・エンド

※未発表曲のため割愛。

04. POP SONG – PlayStation®︎ CMソング

 改めて曲のインタビュー記事を読んでみたところ、歌詞の解説から始まるのですがPOP SONGから想像つかないほど深くてなんか申し訳ない気持ちになりました。気になる方は記事を読んでみましょう。
 初めてこの楽曲を聴いた時は「メロディが米津さんぽいなぁ」という感じがしました。それはAメロの冒頭の部分。

ちゃらけた愛を歌ってるベイビー 煌めいてシックなメロディ

 この部分のメロディは山なりになっていて2回目の山は1回目の山の時よりも少し音が低くなっています。これだけで「あぁ米津さんぽいな」と感じるのは私が「馬と鹿」が好きだからでしょうか。「馬と鹿」のサビの部分でも似たようなメロディを徐々に音を下げていくラインが採用されています。よくよく考えてみるとそういうメロディって作るの難しくて、似たような楽曲が少ないので印象に残っているのかなぁ、とか思ったりします。
 PlayStationのCMソングという目線で見ても全体的におもちゃ箱みたいな、というよりは少し怪しいサーカスみたいな感じになっていてワクワクできる部分があって満足感が高いです。ただ結局PlayStation5は買えなかったなぁ。

05. 死神

 なんか好きなことやってるな、と感じさせる楽曲。こちらも音楽ナタリーの記事を参考にさせていただくとPale Blueを作った後に「好きなことだけやろう」といって作り始めた楽曲だそうです。そう言われてみると遊びの様なものが曲を通して散りばめられており、またサビも独特なリズム(ああ火が消える 火が 火が消える)でカッコよくてアチチチチチチしてますね。
 独特な、という話でいくと本楽曲は落語の『死神』という演目の「アジャラカモクレン テケレッツのパー」という独特なフレーズをモチーフとして作っている様です。なんで落語から?というのは米津さんが元々落語が好きなようで。好きなものから好き放題やって音楽を作る、というのも良いですね。書いていてふと思いましたが、確かによくよく考えるとタイアップ感がない楽曲でもあるな、と思います。タイアップ感ってなんだろうって考えてみると、タイアップ先のメッセージ性の強さとでもいうのでしょうか。メッセージ性の強さを出すのも難しいことで、タイアップ曲以外がメッセージ性が無いわけでも無いのですが、本楽曲は何かを強く伝えるというよりは「楽しんでるで」っていうことを全面に押し出して、それを観て聴いている感じなのかもしれません。

06. 毎日 – 日本コカ・コーラ「ジョージア」CMソング

 毎日を過ごす人たち、特に仕事をしている人に向けた応援歌みたいな曲、という印象を受けました。ハイホーも白雪姫の7人の小人たちが仕事をしているシーンでの掛け声だったり、「ぢっと手を見る」の部分も引用元は石川啄木の第一歌集『一握の砂』に収録されている以下の歌だと考えてられています。

はたらけど はたらけど猶(なお) わが生活(くらし) 楽にならざり ぢつと手を見る

 仕事に限らずですが、毎日頑張って生きているのにどうも好転しない日々を送る人達の代弁をして、応援もしているような曲という印象です。
 曲はというと4つ打ちがメインで4拍目がシンコペーションしていて、全体的にハネているのでそれだけで楽しい印象を受けます。ただ後ろ向きな歌詞や叫び出しそうなメロディも合わさって、カラ元気、無理して元気に振る舞っている雰囲気を曲中からひしひしと感じています。曲自体はすごく明るいのに歌詞の内容はというと、自分なりに頑張っていてもなんも良くならないし、どうにでもなれーみたいな、将来の不安がいっぱいだ、みたいなアンマッチな状況をバランス良く表現していてさすがだなと勝手に感心しております。
 あと個人的に気になっているのが編曲にYaffleが参加していることです。多くの楽曲をプロデュースしておりますが、藤井風のほとんどの曲をプロデュースしている方みたいです。今後、藤井風とも関わりが増えていくのかな?とか勘繰って楽しみにしています。
 余談ですがアーティスト写真で手に持っている本が白雪姫(snow white)なんだそうです。こういう作り込みも細やかで楽しめるところですね(Amazonで書籍を探しましたが見つかりませんでした…)

07. LADY – 日本コカ・コーラ「ジョージア」CMソング

 大好き曲きました。LADYリリース直後は外出る時はリピートし続け、今でも良く聴くプレイリストに入っています。イントロのピアノのコード進行からとても良いですよね。進行自体はⅣmaj7→Ⅲm7(→Ⅲ♭m)→Ⅱm7→Ⅰmaj7(→Ⅱm7→Ⅲm7)みたいな感じで下がって上がる、というシンプルな進行だとは思いますが、これがなんとも良い感じに日々がゆらゆらして続いていく、なんとも言えない気怠さ、軽やかさ、晴れやかさを演出しているように思えます。
 音楽ナタリーの記事を読んでみても本曲では日常感、シンプル感を演出すること拘っていたようで、それが上記のワンコードのループに繋がっているのだと思います。ただ聴いている側としてはほぼほぼワンループとは言え退屈になるようなことはなく、メロディのリズム感やブラスセクションでの色付けが生活に彩を添えているように感じます。いつまでも何度でも聴いていられる名曲ですね。

08. ゆめうつつ – 日本テレビ系「news zero」テーマ曲

 以前はnews zeroを観ていたのでサビはよく聴いていたのですが、それ以降あまり聴いていなかったので改めてじっくり聴いてみました。
 この曲めちゃくちゃ良くないですか。今まであまり真面目に聴いてなかったのを後悔したレベルでした。個人的に何が良いってドラム、グルーブ感です。Cメロ入る前のドラムを聴いてやっと気付いたのですが「この独特なリズム感のドラムは感電と同じ人やな」と思ったらその通りでドラマーは石若駿さんでした。見覚えある名前だなぁと思ったらそらそうで、有名な方々のサポートはもちろん、King gnuの前身のSrv.Vinciの初期メンバー、あとmillennium paradeにも参加していたようです(Fly with meなど)。
 このリズム、よくよく聴いてみるとオンタイムからかなり遠い存在だと思います。オンタイムじゃないと普通の演奏では”ただもたついているだけ”と捉えられそうですがそういうわけでもない。こういう場合、スウィングでは?という声も聞こえてきそうですが、スウィングかと問われるとなんかそれも違うような気がするのでタメというやつでしょうか。曲全編を通して人間臭いリズムで日々の隙間を埋めてくれそうな曲だと感じました。

09. さよーならまたいつか! – NHK連続テレビ小説「虎に翼」主題歌

 「毎朝聴けるものを」と意気込んで作られた楽曲。確かに毎朝聴けちゃうね。イントロのストリングスから爽快な朝の感じと朝ドラの主題歌らしさが全開ですね。この楽曲についてはかなり好きなんだけども何を書くべきかとても難しい楽曲でした。とりあえず言えることは「ウキウキで散歩できる楽曲第一位」ということです。ちなみに二位はLADY(夜の散歩の方が良い)、三位は毎日(踊り出しそうなので散歩には不向き)です。ふざけて書いている様ですが「毎朝聴けるものを」目指した楽曲なのであればまんまとその通り受け取ってしまっているわけで。朝ドラとなるとやはり国民的な番組、朝の看板的なイメージ(すみません、私は生活スタイルと合わないので観てませんが)があると思うのですが、その主題歌らしさもあり、その上で人々の生活に馴染むような楽曲になっているということでしょうか。刺激が多く求められている時代で音楽も刺激的なものが増えていく中、刺激的なものを極力減らして人に馴染んでいくような音楽になっているような気がします。こういう楽曲が風化しないで永く聴かれるのかな、とか考えさせられたりもしました。
 あとMVがとても素敵ですよね。

10. とまれみよ

※未発表曲のため割愛。

11. LENS FLARE

※未発表曲のため割愛。

12. 月を見ていた – ゲーム「FINAL FANTASY XVI」テーマソング

 ついにFINAL FANTASYまで・・・もう日本のコンテンツのほとんどに米津玄師おるやん。と思わせた一曲。もしかしたら前からなのかもしれませんがこの頃から楽曲にピアノがメインとして使われることが多くなった気がします。LADYの音楽ナタリーの記事にも書いてありましたが最近はピアノで作曲することが増えたようです。昔の楽曲はギターから作ってるな、というか曲中にギターがメインで使われているな、という感じだったので色々と変遷があったのでしょう。
 これは推測ですが、恐らく米津さん自身が「凝り性なので凝っていくうちに転調なども多めになってしまう」というような趣旨を語っており、そうなってくるとギターよりピアノの方が曲が作りやすいんですよね。理由としては同時に鳴らせる音を考えてみるとギターよりピアノよりの方が音数が多いしボイシングについても自由度が高いからです。

13. M八七 – 映画「シン・ウルトラマン」主題歌

 サウンドメイクの宇宙感がとても好き。全体的に反響が大きめでストリングの壮大な雰囲気を醸しつつ、重厚感のあるキックとベースでスケール感の大きさが出ていますよね。細かい効果音もとても雰囲気が出ていてすごい。こういう反響とサビ前の「ドドドドドドド」みたいな音を聴くとなんで宇宙をイメージできるのでしょうか。宇宙では音は聴こえないはずなのに。
 この曲で他の曲では聴いたことがない浮遊感があるのが2:23〜3:05のCメロの部分。ここの部分のコード進行とか転調とかはどうなっているのでしょうか。聴いている分には自然に聴こえて浮遊感があって気持ちいいのですが、どうなっているか考え始めると全然分からなくって「うぐぐ…」となっています。いつか調べてみたいですね。ということで調べてみました。調べてみたらとても興味深く、本楽曲が計算し尽くされたものだということに気づきました。是非ご一読ください。

 あとMVを並べてみて気付きましたが他の楽曲と動画の解像度が違いますよね。初代ウルトラマンが放送された当時のブラウン管を模しているのでしょうか。知っている方いらっしゃいましたら教えていただけると嬉しいです!

14. Pale Blue – TBS系金曜ドラマ「リコカツ」主題歌

 曲を通して感情が溢れているような楽曲。とても綺麗ですよね。曲の前半ではしっとりしながらもコロコロするような音やキラキラする音が多めで可愛い印象があります。曲の後半では曲調がワルツに変わり、流れるように壮大に、より綺麗な雰囲気になります。こんな曲も作れるんかどうなってるんや。

 個人的には2:24の「カッ」っていう音(恐らくスネアドラムのリムショット)を入れるかどうかってすごい悩んだんだろうなぁ、と勝手に妄想しています。入れなかったら入れなかったで「はっ」となるし、入れるとまだまだ続いている感じが出るし、難しいところかなと個人的に思いました。どちらかというと「ここも入れるんだ」という意外だった、という感想ですね。そんなことを思っていたのですが改めてWikiを拝見したところ、私が挙げているところとは別のところかもしれませんが、リズム&ドラム・マガジンのライターさんもリムショットが印象的な点として挙げられている様です。効果的に使われているのは間違いなさそうですね。

15. がらくた – 映画「ラストマイル」主題歌

※未発表曲のため割愛。

16. YELLOW GHOST

※未発表曲のため割愛。

17. POST HUMAN

※未発表曲のため割愛。

18. 地球儀 – 映画「君たちはどう生きるか」主題歌

 私は「米津玄師 2023 TOUR / 空想」の2023年7月1日の横浜アリーナが静まり返る中、初めて聴きました。どこか懐かしく、優しさに包まれるような楽曲でとても心地良かったのを覚えています。それもそのはず、こちらの音楽ナタリーの記事を引用させてもらいます。

小さな子供の頃から宮崎さんの映画を見て育ちました。いつしかわたしは大人になり、音楽を作る人間になりました。その音楽を沢山の人に受け取ってもらえるようにもなりました。まだ至らぬ部分も数え切れないほどありますが、至らなさも含めて確かにここまで生きてきたのだと思えます。

「地球儀」は「君たちはどう生きるか」の為の曲であり、わたしが今まで宮崎さんから受けとったものをお返しする為の曲でもあります。今まで映画を作り続けてくれてありがとうございました。そしてこれからもずっと作り続けてください。

 確かにそうだようなぁ、と。ジブリ映画を観た思い出を思い出す時って結構優しい気持ちになるような。そんな気持ちも反映してくれつつも、映画の意図を汲んで制作してくれたような気がします。その上、映画がかなり難解でしたからね。
 地球儀のCDの特別版には160ページに及ぶ写真集と米津玄師と鈴木敏夫の対談が特典として付いています。米津玄師と宮崎駿が一緒に写っているだけでも感慨深いし、対談もこの曲が数年かけてどのように作曲されていったか分かる内容となっているのでおすすめです。

19. LOST CORNER

※未発表曲のため割愛。

20. おはよう

※未発表曲のため割愛。

以上になります。新アルバム発売まで待ち遠しいですね。今発表されている曲を聴いて首を長くして待っていましょう。それでは!

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